「地方自治経営学会研究大会」レポート

5月16日(水)17日(木)に開催された地方自治経営学会研究大会。遅ればせながら、初日の議会改革に関するセッションの様子を当日の現場からのツイートを再構成してレポートとします。

s地方自治経営学会2

研究大会スタート。

片山善博会長の開会挨拶。

地方主権改革は一丁目一番地と言っていた民主党、色褪せた感がある。教育現場の貧困、格差をはじめ、地方自治の現場で働く者同士が日々感じることに根差して試行錯誤、底上げする機会にしたい。 憲法記念日は地方自治法記念日でもある。民主主義を草の根から、が地方自治法。憲法と地方自治法は双子の関係。憲法には地方議会の設置が明記されている。議会不要論もあるが、憲法に位置づけられた機関として改良を重ねていくべき。経験を共有し、切磋琢磨を。

全国から650名の参加、と司会者。

最初のプログラムは「大阪都構想策定の新しい動きと問題」。パネリストは谷隆徳日経新聞論説委員、飯尾潤政策研究大学院教授、青山彰久読売新聞編集委員、コーディネートは山下茂明大教授。
青山氏から口火。「大都市問題は、政策、制度、政治の側面から考えるべき」 青山氏「府や県のやることがなくなってきている。以前は大都市部からあがった税収を地方部へ再配分していたが、公共事業減もあり、その機能も今やほぼない。」東京都も存在意義が曖昧だといつも思うが、どうなのだろう?都議会にもあまり知られることはないが、大変な税金が投じられている。

午後の討論「地方議会の改革、こう進める(具体例)。その苦心、苦労、成功例(改革の前進)、反省点、今後どうするか」開始。
s地方自治経営学会1
まずは一問一答方式の話から。
三重県議会の山本議長:傍聴者から見て、どこを答弁しているかわからなかった。平成15年に対面方式の議場に変更したと同時に導入した。
続いて佐賀市議会の福井議長:傍聴席からも有線TVからも、わかりにくいの声。一問一答であれば掘り下げられる。議員も勉強しておかねば。執行部はプロ。一問一答で本音が言えるようになった。平成3年から議員だが、議会は大きく変わった。原稿なしにモノを言えるには勉強しておかないといけない。この道路はいつ舗装してくれるか?なんて担当に行けばわかる質問はできなくなる。掘り下げる力がないと、ケーブルテレビを観た市民から「あの議員は何だ?」と指摘が来る。
山本三重県議会議長:議論が噛み合うのは間違いなく、一問一答はいい制度。ずれた答弁があった場合もすぐに質せる。行政側がどうとかでなく、市民から見てわかりやすいかどうか、で決めるべきであり、一問一答方式は有効。
多摩市議会の折戸議長:8期目になるが、最初から一問一答だった。最近、1問目の答弁を事前に手にして再質問をするのでさらに深まるようになった。
続いて「議員間討議」について。
会津若松市議会の目黒議長:議員になって、議会というところは議員間で議論をしないことがわかった。市民との意見交換会で出された意見を、それぞれの問題ごとに各常任委員会に振り分けて政策討論会として議員間で議論している。
議会改革が進んでいる上越市議会が「なぜ議員間討議が成り立つのか」の一点で視察に来た。議会の意思として何を示すべきか、で違いを出し合い、合意形成していかないと、自分たちの主張だけしていてもダメ。
続いて「反問権」について。ちょっと雑感ですが…残念ながら議論が今一つ深まりません。報告者としての6名の議長とコーディネーター以外に3名の市議会議員がいる意味がよくわかりません。多過ぎるように思えます。続いて「議長選挙の立候補制」について。裏で何もしないのか?とコーディネーター。
折戸多摩市議会議長:事前に何も相談がないか、と言われれば、ある。がオープンにやる意味は大きい。
目黒会津若松市議会議長:議会の見える化の一環。何で議長になりたいかを明らかにすることの意義。多数派工作はある。「実際は裏で決まるのではないか?」と重ねてコーディネーター。 「いや、はっきり前進だと言える」と目黒議長。「前回4人会派の私は15対14で負けた。今期、3人会派となった私が議長になったことが議長選に意味がある証。信じられないかもしれないが、公明党が割れた」。 ※確かにそれはスゴイな。
続いて「通年制議会」について。
山本三重県議会議長:今は2期制。通年制は議論を重ねている最中。今年中に長崎県と栃木県議会が通年になるのではないか。知事による専決処分もなくなるよさがあるが、通年制は会期を確保するためではなく、何をするための通年制なのが重要。 議会に呼ばれる機会が増えるのでは、とする知事側の危惧もあったが、必要な人だけが来てもらうので心配はない。
山田犬山市議会議長:議論はしているが慎重。何がやりたいのか、が一番重要。委員会の閉会中開催もできるし、全員協議会を月1回やっているので、通年の必然性あるのか?と。
続いて「議会報告会」について。
「執行部以上に住民に喜ばれる報告会が議会にできるのか、どの程度意味があるのか?」とコーディネーター。
山本三重県議会議長:島が二つあり、そこで初めて出前トークを開いた。大変喜ばれた。
「コーディネーターのイメージと私たちの実態は違う」と目黒会津若松議長。 5月と11月に開いているが、市民と議会の議論がようやく噛み合うようになり、建設的な意見交換会になった。当初は報酬や定数を下げろという声ばかりだったし、どぶ板的な要求ばかりだった。また、当局と議会の成り立ちの違いの説明からしなくてはならないので、時間がかかった。 感情的で攻撃的な意見は5年目で一巡した感がある。今では、その地区や全市的な問題点を事前にそこへ聞きに行って、準備をしてから行った。財政問題についても、総務委員会が大学の先生を呼んで分析・学習を重ねて的確にこたえられるようになってきた。
福井佐賀市議会議長:今年からテーマを決め実施。議会だよりを見てきてから来て、と。市民目線で用語もわかりやすく。16会場を班分けをし、必ず各常任委員会委員がいるようにしている。正副議長はオブザーバーとして全会場へ。議員のレベルアップ、市民の関心アップに。聞くことを大事にしよう、と。
続いて「議案への全議員の賛否公開」。
山田犬山市議会議長:賛否が分かれたものだけを議会だよりに。全結果はHPに。会派は緩やかなので割れることある。
続いて「議員提案の条例」。
坂井岡崎市議会議長:議会基本条例に続き、防災基本条例をこの秋目指し、議会が市民の近くへ出向いて準備してきた。
地方議会についての討論続行中。先を行く6議会の実情、裏側がわかる面白い時間でしたが、盛り込み過ぎのきらいもあります。司会者も……。休憩です。
討論の後半開始。「議会改革のきっかけは?その動きは本物か?
目黒会津若松議長:平成19年の議長選挙、議員倫理条例制定の動きがきっかけ。議員側の有志に加え、議会事務局職員の意欲、果たす役割も大きかった。
山田犬山市議会議長:実態が先にあり、基本条例制定で議会報告会等がさらに深化した。 基本条例制定で議会は大きく変わった。実効性の検証も行っている。動画をつかった市民との意見交換を行う試みも進めようとしている。
坂井岡崎議長:一問一答方式、議長任期をこれまでの1年から2年への延長等、具体に改革を進めている。
議会内で改革派は少数、多数は無関心、不熱心?どうするか」が次のテーマ。
福井佐賀市議会議長:それぞれの会派の議論を取りまとめてきた。合併で問題が多岐に亘っているので、その共有が大事。有線放送での放映が始まり、市民の目線が大変厳しくなってきた。議会としての事務事業評価も始めた。
続いて「議会事務局(長)の問題」。
市長部局へまた戻る人事のあり方で福井佐賀議長:局長は全て私が決めてきた。法制係を今年度から増員を求めて実現した。その分、議会としての水準を上げるために力を尽くす。議員と喧々諤々するくらいの職員を見つけ、市長にくれと言ってきた。
どうしたら旧態依然の議会を破っていけるのか?突破口を開くのにはどうしたらよいのか?と伊藤八戸市議から報告者への質問に答えて山田犬山議長:住民が、頑張る議員と頑張らない議員の評価を下してくれている。後ろ向きの議員は選挙で消えたので、殆ど推進派になった。 むむ…そりゃ稀有な例だよね。
目黒会津若松議長:議員は一国一城の主の思いが強いので、上から言ってもダメ。2対6対2の法則。推進の2割、真ん中の6割、消極の2割。6割をどう巻き込むのか、がポイント。 まあそうなんだけれど…。
最後に一言ずつ。
目黒会津若松市議会議長:議会としての議決責任を自覚する議会へ。徹底した議員間討議をし、研究をし、議決に対する自分の意思を示すというプロセス。会派内での賛否が分かれることも多い。勉強し、自分の頭で考える議会になってきた。 半分は先進地視察、半分は専門家を招いて学ぶことに調査費を使っている。市民に役立つ議会に変わりつつあるのかな、と思っている。
山田犬山市議会議長:質問や質疑の数が明らかに増加し、内容も明らかに変わってきた。現状を聞くだけの質問がなくなった。 議会としての情報公開が目覚ましく進んだ。昔は誰が質問したのかわからない議会報だった。売名行為だと、言われた。全議論を安く簡単に放映している。議員の意識も当初予算の修正や付帯決議が当たり前になり、二元代表制を踏まえる議会となった。思考停止だった議会が思考するようになった。 住民の議員に対する評価の物差しが変わってきた。そのことで、議会改革も進んだ。
「世話になった、握手した、で投票を決めるという声が相変わらず多く、議会改革を唱えても…と聞くが」とコーディネーター。
山田犬山議長:そういう声も聴くが、それだけではなくなってきた。 地元だから無条件で、という人は減ってきたのではないか。普段の活動、発言を、動画等を見て判断する住民が少しずつ出てきた。一気には変わらないが、確実に変わってきていると感じる。
最後に折戸多摩市議会議長:会派だから…ということでなく、議員一人一人が自分で考えることを重視。一人ひとりの考え方を平等に聞き合い、認め合うことにつながってきた。投票率が40%台であることによる危機感が大きい。全会議の傍聴可能をはじめ一連の改革。伝わる議会報への改革を進めている。
犬山市議会では年1回の議会報告会を開催している。第1部で記念講演、2部で委員会ごとに報告。毎週月曜日の2時からオープン議長室を試行的に実施中。来る人が固定化するという課題には、youtube使って議会報告番組「どんでん動画」を議員有志でつくって発信中。ぜひ検索を、と山田議長。
目黒議長:会津若松市議会は議会報告会、政策討論会に加え、広報広聴委員会を議会として設けている。自分で報告会をしているから、という議員もいるが、主語が「議会」であることが極めて重要。「96条2項の議決権の拡大は、栗山町も自分たちも検討中。条例は徐々に深化できればいい」。 東京財団では、「議会報告会(市民との意見交換会)の義務化」「議員間討議」「陳情・請願者の発言機会」が3点が揃ってない条例は偽物だとしているが、自分もそう考える。
ここから質疑。
奈良県の村議会の方から:16年前から議長選は完全立候補制で、任期は4年間。なぜ他の議会でできないのか?と。4年は本来の姿だが珍しい。これに答えて「任期1年は単なるたらい回しであり、議会自ら議長は飾り物だと言っているのに等しい」と目黒議長。でもうちも含めて4年ではない。
廣瀬克哉法政大学教授から講評。
 全国で議会基本条例制定済みの議会は250、議会報告会(意見交換会)含め市民との直接対話の機会のある議会は350、一問一答は6割以上が採用。それぞれ標準装備になってきている。
議場での議論の仕方について…。従来は議員間討議がなかったか、議事録に残っていなかったものが、議事録に残る形で論点がわかる形で行うようになってきている。議会としての案を固めて議員提案の条例づくりも進んでいる。議会基本条例制定はもちろん議員間で行われているが、首長提案の条例についてどう議員間を行うのか…。
議案への質疑は判断材料を獲得するためのものであり、答弁を受けてどれくらい納得し、漏れている問題点はないのか。そこに議会としての調査を加えたり、専門家の知見が踏まえられたかどうかが大事。 何が論点で賛否が分かれるかが確認出来るかが重要。議事録をみれば、議決の裏付けがわかる。
通年議会は公聴会などを開催するためには有効。公聴人の公募、公聴、議決のプロセスを考えると、現行の会期では継続審議が前提となるので難しい面がある。一年中議会としての意思決定ができるためには有効な手立てとなる。
住民との関係の改革…。議会報告会という名称が、市民との対話の場であり、市民が議会に対して一般質問できる場というイメージが浮かんでこない面がある。実態を示した名称を含めて市民に示すことが必要になってきているのでは。
市民と議会双方の学習機会。それぞれが自分たちの責務、権限について確認する場になる。 これまで機関としての議会の職責について、共通の認識があったのか?なかっただろう。それが議会改革を持続していくための原動力として重要。
最後に議会としての政策作りについて。会津若松市議会では、広報広聴委員会としてテーマを絞り込んでいる。テーマは政局的な配慮ではなく、議会として取り組むべき問題として絞り込むことが重要。政治的駆け引きとして、では、議会としての議論が実を結ばない面があるのではないか。問題意識を共有、広げ、各地での実践が展開されることに期待したい。
続いて朝日新聞論説副主幹の坪井ゆずる氏
昨年の統一選前に≪修正しない、提案しない、公開しない≫の三ない議会特集をした。≪ダメ議会三冠王≫という名称を提案したが、それは厳しいとなって≪三ない≫となった。全国の36%が三ないだったが、三つともゼロだけなので、実質は殆どが三ない。
首長提案には自分たちの意見が入っているから修正なしだというのはおかしい、という議員の声を多数受けたが、オモテで修正議論しなければ意味がない。なぜオモテでか?お金を削る時代になっているから。なぜ削るのかの説明が求められる。 一般市民に分かるようにしないと議会としての説得力を持たない。4年間で2本以上の条例をつくった議会は2%しかない。
昨年の統一選は、震災後となり投票率が落ち込んだ。とりわけ道府議会選挙が下がっている。殆ど戦後最低だった。栃木県議選は9回連続戦後最低。ほかもそれに近い。投票率の低さが何よりまずい。 裏返しとしての大阪や名古屋。首長選挙の候補者が議会定数を削ると言うと人気が出るということはかつてなかったこと。
住民が、議会は今のまんまである必要はないと見ているということ。 定数も圧倒的に減っている。なのにさらに減らせと言われている議会。住民の目線がさらに厳しくなっている。 地道に改革していくしかない。
それをどう知らせていくのか。 住民に関心のある話を議論すればいい。休日や夜間議会にしなくとも、論じるテーマが面白ければ住民の眼は議会に向く。わかりやすく、果たしている責任をどこまできっちり説明できるのか、に尽きる。 そういう意味では賛否の公開は当たり前の話。
政務調査費を返上して地域経済で使ってくれ、という議会があったが、それは本当にいいことか?政務調査費の使い道が自分たちで分かっていないということではないのか。議会は要らない!というのが住民の目線。最終決定権を持っている議会が住民とリンクしていなければ、地方自治は機能しない。
続いて元鳥取県知事で総務大臣を務めた片山善博氏
議会は地域の課題を解決する議事機関である。地域主権改革を言わなくなった野田政権。一丁目一番地と鳩山氏は述べた。地域のことは地域で責任を持って決める、と的確なことを言った。鳩山さんはいいことも言っていた(会場笑)
亀岡の悲惨な事故は、それぞれの地域の教訓としてほしい。ああいう現場は全国どこでもある。膨大な公共事業、特に道路事業をやってきたのに、白線しかない道路が改修されていないことは反省しなければいけない。 予算の振り向け先が本当に適切だったか。生活道路でリスクの高いところの整備を。生活道路が県道(都道)だというのも問題の背景にある。自分たちで決められない道である問題。市町村道にすべき。市道が県道になって昇格祝をする感覚のおかしさに気づくべき。 市役所には県道(都道)にした方が手間がかからない、金が節約できる、なんて考えているのがまだいるが、本当はそうではない。
交通規制も市町村道であれば議論できるはず。警察は都道府県だから動けないことがおかしい。地域で話し合って最適な状態にすることが自治。もちろん異論や反論もあるだろう。
利害調整は厄介だが、それも自治。国や県でで決めろ、は自治ではない。
そして、この問題は教育委員会がモノを言うべき問題。では教育委員会が信頼に足るものになっているのか?大いに疑問だ。教育委員会の人選は極めて重要。 教育委員はちゃんとしているか?その委員を同意したのは議員。首を傾げる選び方をしてはいけない。子どもたちの環境を整備する教育委員の選び方はもっと考えるべき。いい人を得るためには報酬上げる議論をしてもいい。ちゃんとやってくれるなら。地域で議論を。
議員は政策情報はどこから得ているか?自ら動いて手に入れよ。
指定管理制度は住民サービスの質向上の為なのに、コストカットのツールだけになっている。非正規雇用だから単価が安くなりよかったと言っているが、本来は質の向上。図書館の指定管理なんて見識を問われる。
光を注ぐ交付金は、光があたらなかったところ(知、図書館、自殺対策等々)に一千億円つけたが、翌年度の経常経費をカットしたネコババ自治体がある。議会はそういう情報をちゃんと得ているか?首長は都合のいい情報しか出さない。
議会改革はこつこつやるしかないが、市民が変だ、と思う点は変えるべき。 会派拘束も市民感覚から見ればおかしい。私は反対だが、会派で…と言うなら、会派をやめたらいい、と市民は考えている。議員内閣制の国政と違い、地方議会では基本的に議員個々が自分で判断すべき。
これにて初日終了です。
懇親会開始。
片山善博さんの挨拶
今回は議員の皆さんが多い。これからの地方分権は議会が中心。これまでは首長が不当に目立ち過ぎていた、私も含めて(会場笑)。総務大臣の時に、行政側だけでなく議会側にも通知を出すように変えた。
今まで総務省の部局も全て行政側のものだけだったので、行政局に地方議会課を作ろうと言った。今春、地方議会企画官という課長級が新設された。地方議会のありかたを正面から受け止めるセクションが国に初めてできた。どんどん動くように、と伝えておいたので、活用していただきたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)