東村山市の廃棄物行政は今 ~焼却施設更新への課題(「緑の風」原稿)

昔の資料を整理していたら、どなたかにいただいたこんな新聞記事の切り抜きが出てきました。

1996年9月23日 東京新聞多摩版 ※17年前の記事です

1996年9月23日 東京新聞多摩版※17年前の記事です

積年の課題であった小金井市の処理場問題が日野市による広域処理という新たな展開を見せる中、「NPO法人多摩住民自治研究所http://www.tamaken.org/」発行の月刊「緑の風」では、2013年4月号の特集として「地方自治体とごみ・廃棄物問題」を取り上げました。

多摩地区の廃棄物問題、中間処理施設について考える素材として、日野市、武蔵野市、国分寺市、日の出町とともに東村山市の状況をまとめるように、と編集部から依頼を受け、私も原稿を書きましたので、以下転載します。

尚、内容は今年3月段階の状況に基づくものです。

 

「秋水園」で中間・単独処理

東村山市は多摩地域北部、埼玉県所沢市と県境を接して位置し、人口約15万3千人。一般会計ベースでの財政規模は約500億円ですが自主財源比率が低く、財政力指数は0.8前半を推移し、地方交付税の交付額が多摩地域最大という状況が長く続いています。

廃棄物処理については、近隣自治体が柳泉園(西東京・東久留米・清瀬)、小村大(小平・武蔵村山・東大和)といった広域共同処理を行っている中で単独処理を続けており、容器包装プラスチックを市内民間事業者に任せている以外は全て、中間処理は所沢市との境・秋津町にある「秋水園」で行っています。秋水園は、昭和37年にごみ焼却とし尿処理の施設として開設以来、拡張を続け、炉は昭和56年に現在の75トン×2基とする一方、し尿処理は平成17年に最小限の施設に改築して今に至っています。

 

「燃やさない・埋め立てない」から15年~理想と現実のはざまで

今から15年前、東村山市では市民参加で秋水園再生計画「98プラン」が策定され、その基本理念「脱焼却、脱埋め立て」に注目が集まり、全国から視察が殺到したと聞きます。

しかし実際には、分別収集の拡大や指定有料袋の早期導入などが進められる一方で、生ごみ堆肥化事業の停滞や集団資源回収補助金の削減、店頭回収拡大の遅れ等、掲げた理念と現実の政策の不整合をめぐって、議会でも厳しいやり取りが幾度もなされてきました。

現在の分別は、容リプラまでで9品目。市民1人あたりのごみ量は、多摩26市中6位(平成23年度)となっています。

 

最大の課題は焼却施設の更新 

現在の焼却炉は、平成22年から2か年をかけて10年間の延命化工事を行いました。

しかし、平成33年以降は白紙の状態であり、今後10年の市政運営にとって、老朽化した公共施設の再生・再編、西武鉄道連続立体化事業と並び、三指に入る極めてきな課題です。

秋水園を抱える秋津町の住民にとっては、さらなる固定化への強い異議が示されることは想像に難くなく、一方で未利用地を殆ど持たない東村山市としては他の選択肢を示すことは極めて困難な状況でもあります。

ゴミ処理施設を抱えるということは、大気汚染や臭気、騒音等に加え、出入りを繰り返す大量の収集運搬車両による事故や振動、騒音に日々さらされることになります。

 

課題は「施設の小規模化」と「住民合意」

ここ3年ほどは、資源物中間処理施設の更新をめぐり、議会内外で多くの議論が続き、昨秋には見直しを求める直接請求も起こされました。

一定規模の施設の必要性については共有しながらも、対立の火種になったのは、結論ありきの行政の姿勢であり、情報の出し渋りや提供のタイミングの遅れでした。地域住民に対しての情報開示や説明も、いくら改善を求めても、「秋水園周辺対策協議会」を構成する自治会長へしか行わず、住民や議会への説明責任を果たしているとは言い難い状況は、現在も続いています。

最大の迷惑施設とも言えるごみ処理施設、とりわけ焼却炉の問題。委託金を払って他の自治体に丸投げするのか、かつて破談に終わったと聞く柳泉園組合との合流を模索するのか、自前での単独処理を継続するのか…。いずれにしても合意形成には多くの困難が立ちはだかることだけは間違いありません。

私自身は、武蔵野市やふじみ衛生組合(三鷹市・調布市)の取り組みなどに学ぶ中、一日も早く市民全体の問題として提起し、議会でも様々な選択肢を見える形で議論する場を設けることが不可欠だと考えています。

そしてさらに大事なことは、どこでどのように処理をすることにしても、家庭や事業所から排出されるモノ自体をどれだけ減らせるのか、という問題です。それには、国レベルでの容器包装リサイクル法の見直しによる発生抑制の徹底や、生ごみ資源化施策の促進、大規模処理施設に偏った施策の見直し等々をぜひ図ってほしいと思うと同時に、自治体レベルでやれること、やるべきことを徹底して行っていかなければなりません。

ゴミほど、市民の理解と協力が不可欠な政策はないように思います。行政と住民との間の信頼関係が問われる正念場とも言えるかもしれません。情報公開と参加をどれだけ徹底できるのか…議会としても合意形成への共に汗する姿勢が問われていると思っています。

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