2月2日(土)3日(日)に長野県飯田市で開かれた「未来を拓く自治と協働のまちづくり目指す飯田研究集会」。
私は1月12日に自治体学会のメーリングリストで「21世紀の日本を救うために、また、これからの地域社会の編み直しに対して、公民館、社会教育は、何ができるだろうか?」というメッセージとともに開催を知り、急遽申し込みました。
2日のお昼過ぎに飯田市竜丘公民館に到着すると、国、都道府県、市町村の公務員を中心に、研究者やNPOの方たち等々、全国から155名が集っていました。
2日間の進行役は飯田市公民館の木下巨一副館長が務めておられました。
まず実行委員会を代表して竹林昌秀さん(香川県まんのう町福祉保険課長)が、開会のご挨拶。和歌を吟じられた後、熱く語りかけました。
「地域に飛び出す公務員ネットワーク」の意見交換から生まれた初めての企画。総務省、文科省、飯田市に、社会実験をサポートしてくださり心より感謝したい。熟議を持って力を結集しよう。
統廃合に見舞われ改組、首長直轄が増える社会教育。色褪せ減少する公民館。しかし公共を背負って立つ公民館も少なくない。公民館運営審議会制度は、活動を担う民に主体があることを意味する。公と民の視点を円滑につなぐ。公と民の十字路。多様な公益活動の基盤として。柔らかな公を、と竹林さん。
続いて、吉澤之榮飯田市公民館長のご挨拶。
当初、開催趣旨を読み、難しいと正直思ったが、社会の編み直しに社会教育、公民館は何をすべきか、を一緒に考えたい。飯田市では平成19年の自治基本条例制定で公民館の役割が深まり、広がった。公民館は今、自らの学びを深め、他とつながり、若い世代を育てることに全力を挙げていて、そのことに尽きる、と。
続いて牧野光朗飯田市長によるミニ講演「デザイン思考的アプローチによる地域創造」。
昨秋、市長として3期目がスタートした。地域に子どもをどう確保するか、人材育成サイクルをどう構築するかが、定住自立圏構想の土台。金太郎飴のようなまちづくりでは、そこに愛着持つ人は育たない。ラフでもいいから創造力豊かで、デザイン力がある人間を育てられるかどうかにかかっている、と。
続いて、文部科学省生涯学習局社会教育課長の伊藤学司さんと尼崎市顧問・元内閣府政策企画調査官の船木成記さんによる問題提起。公民館をデザインし直そう。
伊藤課長からは、学びを学びで終わらせず、学びを様々な分野の実践、産業につなげている新居浜市泉川公民館の事例等の事例紹介。
船木さんからは、ソーシャルビジネスのプロデュース、自然エネルギーファンド立ち上げなどしてきたが、自分自身は社会教育の人たちと接点は殆どない、という指摘。
また、文化と経済をいかに融合させるか、が地域社会の大きな鍵、と船木さん。飯田市の太陽光発電を各地から見に来られるのに、それぞれの地域に戻っても実現できない例が多いのは、システムだけを見ているから。大事なのは原社長の人柄であり、あゆみ。実は原点は公民館活動にある。それがNPO、CB(コミュニティビジネス)、市民ファンドへと発展した。地域の信頼関係を構築した、ということが柱。
伊藤育課長から「公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」の説明。25年度からの新規事業。文部科学省の25年度予算概要のP.2~5に載っているコレです。
「うまくいくかどうかは皆さん次第。元気の源にしたい」と伊藤課長。
「ハブになれる『人』をどう育てられるか」と船木さん。
飯田市公民館の4原則。1.地域中心 2.地区館並立配置で対等平等 3.住民参加の公民館運営 4.教育機関としての自立。
住民の自由な学びを保障するためには、市長部局から独立していることが重要。公民館がまちづくり委員会の一翼を担っている。
みつける、つながる、育てる、実現する公民館。
続いて「私にとっての公民館、地域にとっての公民館」。
お話は飯田市龍江公民館新聞部長の北原研二さんと、公民館活動がきっかけで市議会議員になられた中島武津雄前議長。
中島議員のお話によると、平成19年4月1日施行された飯田市の自治基本条例は、議会が全面的に主導してつくられたもの。大変珍しいケースだと思います。
人との出会いが公民館の命。自治基本条例を、学識経験者に依らずに小学生でもわかる文章に、と議員全員で学び、市内20か所で市民と意見交換を行い、4年かけて作った。パブリックコメントなんてわからん言葉使わんで、とお婆ちゃんに言われ、「市民意見の公募」とし、コミュニティも「地域自治」にした、と中島議員。
この後、分科会に移り、私は第3「地域マネジメントについて、最前線の現場から学ぶ」に参加。飯田市上久堅地区の「ひさかた風土舎」の取り組みから、地域、公民館、行政の関わりを考える、がテーマでした。
お話は中山間地の農と地域づくりに関することでしたが、議論を重ね、合意形成を図り、実現させていく地域の力は、地区公民館の活動を多くの住民が経験してきたことで醸成、共有されていることがわかりました。
また、飯田市では若いうちに公民館地区館の主事を経験させ、地域の作法、住民と一緒に汗する基本を身につけさせるのだそうです。一般職として戻ってもそのセンス、人のつながりは大きな力となり続ける、と。
中央公民館という存在をあえて置かず、地域館を全ての基本として並列させている、と聞き、理念というよりも強い信念、街としての哲学のようなものを感じました。
夜の交流会では牧野市長さんとも少しお話する機会に恵まれましたが、「職員には、覚悟して行って来いと伝えて、公民館地区館を若いうちに5~6年は経験してもらう。そこで培った力はその後のあらゆる業務の土台になるからね」と笑顔でおっしゃっていました。
宿泊は飯田市立天竜峡温泉交流館で、数名ずつ相部屋で、私は山形県庁の若い職員さんと、鴨川市の課長さんと一緒。宿の食堂で40名ほどの方たちとさらなる交流を図りましたが、東北、関東、中京、四国、中国、九州…と全戸国各地から「自治と協働」に携わる公務員、NPO等のスタッフ、大学や大学院の研究者の皆さん…と本当に多彩で、熱意あふれる皆さんと知り合うことができました。
二日目は朝から分科会。
「社会教育・公民館の存在意義をあらためて問う〜地域づくり実践例からの考察」に参加しました。コーディネーターは尼崎市顧問の船木成記さん。
最初の発表者は香川県琴平町社会福祉協議会事務局長の越智和子さん。「ソーシャルネットワーキングの取り組み」と題して、農商工連携に福祉・教育を加えた実践例。昨年からは共助の社会づくりプラットフォームを手がける。
続いて高松市創造都市推進室参事の松本欣也さんによる「市民主体の中心市街地の活性化」。全長2.7kmの高松丸亀町商店街の再開発。きちんとタウンマネジメントの目標、プログラムを立て、まちづくり公社主体で進められた。
3人目は「災害法制ワークショップ」東北大学大学院の丹野将洋さん。被災3県で徹底した現地調査。1.災害救助法から仮設住宅の規定を外すべき。2.みなし仮設住宅の利用にバウチャー制度等、被災自治体、住民の声を活かした制度、政策提言していきたい。地域主体で知恵や議論の場が今はない。
まとめのセッションは「飯田公民館の地平を超えるために」。
コーディネートは牧野篤東大大学院教授。コメンテーターは伊藤学司文科省生涯学習政策局社会教育課長、大槻大輔総務省人材力活性化連携交流室長、船木成記尼崎市顧問、佐藤健飯田市副市長。
伊藤さん「公民館がどうかは別にして、公民館のようなものはどうしても必要」
船木さん「まちづくりのプロデューサーとして、関わったまちに風を吹かす。町を好きな人に出会うとその町が好きになる。飯田の方たちからは町を信じている、町が好きという思いを強く感じる。飯田の公民館は、飯田を好きになっていく人を育てていく取り組み」
佐藤副市長「飯田出身。総務省から25年ぶりに副市長として一昨年戻って来た。私たちには日常なので、仕組みは持ち帰ってもらえるものではない。文字や言葉にできないものを感じてほしい、というのが今回の企画意図。人のつながりが飯田では公民館を核に展開されている。公民館は人を育てている、と言えるが、実は職員を育ててもらう大事な場になっている」
伊藤さん「飯田では公民館を利用するとは決して言わず、公民館をやる、と言う。自治とは何かと言われたら、上から与えられるものではない。なくなった自治体で公民館を、と言っても仕方ないが、減ったとはいえ全国に15,000館もあり、見方によれば社会インフラとして再生させることはきわめて有効」。
船木さん「分館やっとる、と言う。日常生活そのものが公民館。背景にどれほどの思い入れが共有されているかがミソ。自分たちの日常を見直してほしい」。
大槻さん「住民自治。何を一緒に決めるのか。昔は水田の管理。現代の都市地域で活かせるのか…。公園や海岸などの公共空間」。
船木さん「市民協働というが、実態は行政協働なんじゃないか。学習する地域、学習するコミュニティーを。震災から我々は学んだか?」
伊藤さん「公民館が最も力を発揮できるのは、学習するコミュニティー。テーマを何にするのか?平成の最初と今は大きく変わっているのに、それに対応できていない自治体では衰退している。主事が街に出て住民と話すことで課題見つけていくことが命」。
佐藤副市長「行政の課題を住民に一緒に考えてほしい、だけでなく、住民の側からの課題を行政がどう進めるのか、が重要。飯田市では職員800人中100人を地域組織に割いている」。
伊藤さん「文句を言うからには、あなたもやってくださいよ、が飯田ではできている」。
大槻さん「別の角度から見れば、議論する余裕があるということではないか。創発という発想」。
船木さん「つながりと信じる力。お互いを認め合える土壌があって初めて議論できる。自分が関わっている尼崎は、悲しみの歴史を背負っているが、経験から学ぶ力がある。今後、まちづくり大学尼崎を立ち上げる。こどもたちのためにつなげていきたい。あまらぶ(尼崎LOVE)な人を育てていきたい。信じる力を育てられるかどうか、が命だと思う。自己肯定感が響きあうまちをつくっていきたい」。
当日のメモをもとに、自分の記録として起こしてみました。
国、都道府県、市町村の公務員の皆さん約2,000人が水平につながりあった「地域に飛び出す公務員ネットワーク」。
参加されていた方それぞれから高い志と情熱を感じ、また東村山ご出身でNPO法人でシチズンシップ教育に取り組んでいる方などにもお会いすることができた2日間。
今回の繋がりを大事にしながら、自由に学び合うことがもっと大切にされ、まちづくりに主体的に関わる市民がどんどん登場できる東村山に変わることを願って、いただいたヒントを少しでも活かせるよう、動いていきたいと思います。