報告が遅くなりましたが、先週土曜日(14日)から3日間、自治体学会主催の勉強会に参加してきました。
大神神社から望む大和平野
地方分権改革のど真ん中に身を置いてこられ、現在も第30次地方制度調査会会長を務める西尾勝先生による10時間の集中セミナー。
この世界に身を置いたからには一度は直接教えを請いたい…と願っていた大御所中の大御所に学べるまたとない機会と考え、現地へ向かいました。
会場は初日と3日目が桜井市立図書館。木の香りが満ちた素晴らしいホールでした。
2日目は、日本最古の神社・三輪明神「大神(おおみわ)神社」の大広間。
お昼には宮司さんの案内でミニエクスカーションが行われましたが、幽玄という言葉がぴったりの深い深い緑と厳かな空気に満ちた社に、心洗われる思いがしました。
集中セミナー「自治・分権再考~自治を志す君たちへ」in大和さくらいは、以下の5講×2時間=10時間で進められました。
第1講「自治の原型と発展」
自治(自律)と支配(服従)
自治の原型と支配の原型
社会構造の変動と統治の変貌
家族の変貌と地域福祉サービスの膨張
「まちづくり」の課題と担い手
第2講「協働と参加の住民自治」
協働と参加
地域自治組織による協働と自発的結社による協働
日本におけるボランティア活動
日本における住民運動
政治参加の形態 代表選挙と住民参加と住民訴訟・住民投票
住民参加の形態 「陳情請願」、拒議・抗議、提言・建議、協力・受託
「市民参加の武蔵野方式」
第3講「地方分権改革の流れと路線」
地方分権改革の流れ
第1次分権改革と「残された課題」
政治主導に期待をかけたその後の改革
日本の地方自治制度の特徴点
所掌事務拡張路線と自由度拡張路線
司令塔なき改革の混迷
第4講「市町村計画の策定」
「まちづくり」の優先順位を定める指針
市町村計画に盛り込むべき計画事項
住民参加の策定手続きと計画手法
地域生活環境指標(コミュニティ・カルテ)の意味
首長の政治主導と市町村計画のローリング
第5講「自治体職員の役割と心構え」
公務員バッシングに抗して
住民の能力と自治体職員の能力
自治体職員の公共感覚
住民のニーズと創意を活かす政策立案能力
都道府県から市町村への事務権限の移譲を活かす工夫
自治体職員の政策法務能力と政策財務能力
わかっているようでいて体系的に改めてとらえ直す機会がなかなか持てなかった、地方分権改革の全体像。そこに最前線に身を置いてこられた西尾先生であればこそのエピソードが交えられるのですから、贅沢な話です。
3日間に及ぶ講義をまとめて記すことは難しいですが、冒頭に「私の基本メッセージだ」とおっしゃっていたのは、「これ以上の分権化を求めて右往左往することは暫く差し控え、それぞれの自治体の現場で実践の質を高め自治の本領を発揮することに、皆さんの関心とエネルギーを向け直してほしい」ということでした。
また、1995年に始まった地方分権改革が、一貫して団体自治、とりわけ自治体の自由度拡充、所掌事務拡張路線に重点が置かれ、本来充実を図るべき住民自治には光りがあまりあたってこなかったことについても、西尾先生は繰り返し触れておられました。
運営スタッフにあたってくださっていた方たち含めると100名を超えた今回のセミナー。半数以上が自治体職員、20名近くが議会関係者、そして市民グループや大学院等の研究機関の方たちもいらっしゃいました。
私にとっては、代表運営委員を務める中島興世さん(前・恵庭市長)と直接お話をさせていただく機会が持てたことも、かねてから憧れていただけに大変うれしいことでした。
旧知の方に加え、ツイッターだけでつながっていた近畿地区の議員さんたちともお会いし、いろいろな話をすることもできましたし、奈良県や他の自治体職員さん、市民グループの方たちとも知り合うことができました。
自ら出向いて行かなければ会うことのない方と出会い、語り、親交を深めることの大切さ。
久しぶりに痛感して帰ってきました。
自分自身が立つ「今」を形づくってきた潮流を学ぶ機会を得たことに心より感謝し、大きな視点を忘れることのないよう、精進していきたいと思います。