自治日報に寄稿「投票率アップへ議会として向き合う~関係機関を巻き込んだ試み」

自治日報6月24日号3面「議会」欄に拙稿を掲載いただきました。

自治日報は、昭和23年(1948年)に創刊された全国唯一の地方自治専門紙で、掲載いただくのは今回で4回目になりますが、全国の地方自治関係者の目に触れるかと思うといつも身が引き締まる思いがします。

今号には、昨年の改選前に所属していた政策総務委員会(伊藤真一委員長・下沢ゆきお副委員長)における所管事務調査の取組みを振り返り、記してみました。私たちの仕事は、いつどのような方から届くかわからないご相談への対応や市政の課題と日々向き合うことが多いので、ともすると目の前のことを解決できたりある程度のメドがついたら「さあ次!次!」ってなこと=「やりっぱなし」になりがちです。そのため、このような機会をいただけると短時間でも立ち止まって振る舞いを省みることができるので、大変ありがたいと思っています。

画像の下に、全文をテキストでもアップします。約1,800文字と長いですが、お目通しいただければ幸いです。

投票率アップへ議会として向き合う~関係機関を巻き込んだ試み

全国市議会旬報の6月5日号8面に目が留まりました。第100回定期総会で議決した会長提出第1号決議のトップに「地方自治法改正の周知と主権者教育の推進」とあります。成り手不足対策として掲げられたものですが、「主権者教育の推進」という文言が全国議長会決議の「いの一番」に示されたことに、時代の変化と事態の深刻さを感じます。今年10月開催の全国研究フォーラムも「主権者教育の新たな展開(仮)」とのこと。今のところ成り手不足とは縁遠い私たちのような首都圏の議会も、投票率の危機的な低下を前に、優先度を高めて取り組むことが必須となることでしょう。

最近では30%台も珍しくなく、応援で携わった昨秋の立川市の都議補選は27.39%、今春の愛知県大府市議補選は24.64%。補選とはいえ、4人に1人しか投票しない選挙に正統性はあるのだろうか?と思いました。東村山市議選は1971年が 65.17%、私の初当選時(2003年)は49.33%、直近2023年が47.86%。踏みとどまっている感じもしますが、市長選と同日でなければ10ポイントは下がりそうです。

低下を続ける投票率を前に、私たち議会人は何をすべきか、何ができるのでしょう。

岐阜県可児市議会や茨城県取手市議会のように、議会が主体となった地元の高校や中学との主権者教育を私たちも模索していますが、学校教育側のハードル以前の問題として、議会内合意に至ることができずに頓挫していることを白状します。その上で、同様の壁で悩んでいる方々の顔を思い浮かべながら、改選前に所属していた常任委員会の取組みを紹介したいと思います。

■きっかけは陳情

2021年9月、「投票日に雨が降り、車いすや杖や歩行器の人たちはぬかるみに大変苦労しました。投票所内を安全に歩けるように改善してください」という陳情が出されました。付託された政策総務委員会では現地確認を行い、市内21か所の投票所に様々な課題がありつつ改善が十分に図られていないことを把握。所管事務調査「投票率向上対策」を立ち上げました。

■オンラインアンケートで多様な声を把握

まず、課題を①既存投票所の課題 ②投票機会の拡充 ③投票への関心を高める方策 に大別し、初めてオンライン市民アンケートを実施。市議会HPや各委員がSNS等で呼びかけ、1か月間で10~70代まで115人の回答を得ました。真剣かつ丁寧な記述が多く、その後の議論に繋げることができましたが、「投票に行った」が95%であり、「行かない人」の意向把握は課題として残りました。

■関係機関への調査&学び合い&対話

課題②③については選管に対して「投票率に関するデータの提供」を求めるとともに、「これまでの投票環境改善の取組み」「期日前投票の拡充」「共通投票所の設置」「移動投票所の実施」「投票区の見直し」等をテーマに委員間で意見交換を重ねました。課題③は教育委員会が担う側面も大きいため、市内小中学校における主権者教育を中心に聴き取りと意見交換を実施。コロナ禍でオンライン開催となっていた議会報告会でも参加者から多くの意見をいただきました。

その後、専門的知見の活用として佐藤淳青森大学教授によるオンライン研修「投票率向上のために私たちが出来ること」を開催し、選管委員や教育委員会事務局の参加も得て「有権者が投票に参加する要因」や先進事例を共に学び、直後の参院選時には課題①について全議員に呼び掛けて各投票所の実態調査、課題の再整理を行いました。秋には取手市議会の岩崎弘宜議会事務局次長(当時)と可児市議会の川上文浩議員に学ぶ研修をいずれもオンラインで実施。

投票区の定期的見直しや期日前投票所開設時間の大幅延長等、多角的な取り組みを進める大阪府箕面市へは視察に伺い、最後に1年余りの調査を踏まえて議会として初めて選挙管理委員会委員との意見交換に臨みました。

■関係機関に提言。国には意見書を送付

2022年12月定例議会で委員長報告を行って活動を終了し、市長、教育長、選管委員長へ提言書を手渡しました。加えて『郵便投票の対象者を要介護「3」以上に早期拡大を求める意見書』を委員会提出議案として全会一致で可決し、国に送付しました。

以上の経過や提言内容等は市議会HPに掲載してあります。昨春の統一選時に反映された点は、投票立会人に公募の若者が増えたことと、無味乾燥だった投票済証に初めてイラストが入った程度でしたが、新たな啓発事業に取り組む等、選管の意欲も感じています。小さな前進を関係する機関と確認しつつ、今後も投票率アップへコミュニケーションを図りながら互いの責任を果たしていけたらと考えています。

6月議会最終日に行われた「緊急質問」について

6月3日から続いていた6月定例議会が閉会となりました。

最終日の昨日、全ての議案に結論を出しところで、渡辺みのる議員から「小池都知事に都内自治体の首長が出馬要請を行った件について緊急質問を行いたい」旨の動議が提出されました。

すぐに議事日程に追加するか否かが諮られ、13対11の賛成多数で可決となり、質問時間を決める議会運営委員による協議が行われた後、16時20分に再開されました。

これに先立つこと数時間前…開会前に渡辺みのる議員が控室を訪ねて来て、

・先月、小池都知事に対して都内自治体の首長が出馬要請を行い、当市の渡部市長も名を連ねた件について、なぜそんなことをしたのか、知事側から要請があったという報道は事実なのかなど、緊急質問という形で質したい。

・そのためには、本日の本会議で動議を提出し、議事日程に追加することが諮られるので、ぜひ賛成してほしい 旨の話がありました。

私が経験してきた21年間では緊急質問がおこなわれた記憶はありません。私は、

・報道された件は私も問題だと考えていて、その日にSNSにもアップしており、渡辺議員とほぼ同じ認識に立っている

・一方で、緊急質問には要件があり、該当するのか?なにが緊急なのか?という点で疑問がある

・告示を迎えて選挙中の段階で議会として行うことにも懸念がある。報道された後、6月議会初日や3日間行われた一般質問の日等に行うべきだったのではないか?

等をその場で答えた上で、会議規則や議員必携を開き、ネット上でも事例を探し、緊急質問を認めるべきかどうか考えました。

15時の休憩時、「追加の議題とすることを認めるべき」という結論に達し、議長、渡辺議員にその旨を伝えに行きました。

上記の疑念が自分の中ですべて消えたわけではないのですが、これまで東村山市議会では、決議や意見書等を議題にしたいと提案する議員があっても、その内容以前に議題とするか否かの段階で過半数の壁が立ちふさがり、多くが日の目を見ずに終わるのを数多く見て来ました。そのため私はおもに過半数を持っている側に対して「複数名の賛同があれば議題として取り扱った上で、質疑や討論を通じて是非を論じて可決なり否決なりした方がよい」と事あるごとに言ってきました。この一点に立ち返ると、要件や手法に疑問が残ったとしても、私がNOということで議題にならないという事態だけは避けなければいけない、と考えたところです。

これには、会派は組んでいませんが同じ部屋を割り当てられている鈴木たつお議員とかくたかづほ議員と昼休みに率直な意見交換をしたことも少なからず影響しました。年齢も期数もバラバラ、思想信条や優先順位、議案への賛否など異なる点も当然多々あるわけですが、だからこそ気づかない点や学ぶことがあるものだな…と今さらながら思いました。

ということで、昨日の配信を録音した方から音声をお借りして、文字起こしをしましたので、以下アップします。

結果的には、渡辺みのる議員と市長との穏当なやり取りが8分少し続き、どちらにとっても…議会にとってもよかったのではないか、というのが私の印象です。

渡辺みのる議員)質問の機会を与えていただき感謝。5月28日に小池百合子知事に対して都内52区市町村首長が次期都知事選への出馬を要請したと報道があった。報道を知った市民から市役所全体として関わっているのかなどの問い合わせが私どものところに来ている。市長個人の思想信条は尊重するが、報道の事実関係の確認と出馬要請に参加した意図について市民に明らかにすべきと考え市長に質問させてもらう。まず、出馬要請をすることになった経過を時系列で伺う。

渡部尚市長)まず前提として、後ほど質問があるかもしれないが、私の認識としては出馬要請をしたという認識ではない。あくまでも支持を表明したということ。このたびの、選挙中なので名前は控えるが、現職知事への支持表明に至った経過だが、まず23区で区長有志において自発的に現職知事に対して出馬を要請する動きがあった。こうした状況の中で、知事の周辺からある市長に対して、出馬した際には多摩の市長たちからも支持をいただくことは可能なのかという問いかけというか打診があったことから、5月17日に開催された東京都市長会の役員会終了後、並びに5月24日開催の東京都市長会の全体会の終了後に、任意で残っていただいた市長でこうした23区の状況や問いかけがあったという情報を共有した上で、支持できる市長については連名でその旨を表明することになったことによるもの。支持を表明するか否かについては、あくまでも個々の市長がそれぞれの自由意思により判断したものであって、先ほど申し上げたように問いかけというか打診のようなものはあったが、知事や周辺から支持をしてほしいとか、まして立候補要請をしてほしいといったような依頼や要請に基づくものとはとらえていない。以上が経過。

渡辺みのる議員)次に聞きたいことまで答えていただいたので次に最後になる。改めて、今おっしゃっていただいた経過を踏まえて市長が支持表明…私は出馬表明と思っていたが…支持表明に加わった理由をお聞かせいただきたい。

渡部尚市長)私としては、現職知事の当選以来、直接私たち市区町村長から意見聴取をして、ある程度、全部とは言わない…ある程度要望を聴き入れていただいて、たとえば東京都市町村総合交付金についてはかなりの増額をしていただくなど、完全に格差ゼロというわけではないが、多摩地域の市町村行政に対して手厚い支援を行っていただいていることについては高く評価しており、今後も東村山市の発展のため、多摩地域の市町村への支援の充実強化を強く希望して支持を表明したところだ。

渡辺みのる議員)すみません、最後と言っておきながら。改めて、市長個人として支持を表明したというところで、職員や市の予算は関わっていないという認識でよいか。

渡部尚市長)報道では各市長区長の個人名ではなく自治体名が出たので、たぶん驚かれたり疑念を持たれた市民の方がいるだろうと承知しているが、先ほども申し上げように支持を表明するか否かについて、あくまでも個々の市長がそれぞれの自由意思に基づいて判断をしたものなので、先ほども申し上げたように正式な市長会で話をしたわけではなく、任意で残っていただいた方々で話をして、最終的には一人ひとりの市長個人が判断したもの。これまでも私としては各級の選挙…衆議院議員選挙や都議会議員選挙や同日に行われる市議会議員選挙では、割と明確に支持を表明させてもらっている。これはあくまでも行政、市役所とは無関係のことであって、個人として行っているもの。当然今回のことについても、市の職員を使うとか、何らかの税金を使った行為ではない、と弁明させてもらえたらと思っている。