学童保育シンポジウムの報告

子ども子育て支援の新しい制度が一斉にスタートする来年4月。
保育所とともに注目が集まっているのが学童保育(東村山では児童クラブと呼んでいます)の動向です。

一昨日も安倍首相が横浜の放課後児童クラブを訪れたことが報道されていました。
※カナロコ5月23日記事
かつて小泉首相がぶち上げた「保育所待機児ゼロ」が未だ道遠しの中、安倍政権は「放課後児童クラブ定員を5年間で30万人増」を掲げました。

女性も働きやすい環境を整えることで経済活性化を図りたい、という意図自体が間違っているとは思いませんし、そのことで機会を得る人が増えることはよいことだと考えます。

しかし、いずれにも欠落していると感じるのが、「子どもたち」のことです。

先週の日曜日に三多摩学童保育連絡協議会が主催して開かれた地方議員向けの学習会も、一昨日(22日)に全国学童保育連絡協議会主催で開かれたシンポジウムも、その視点に立っていると私は理解しています。

一昨日のシンポジウムを現場からツイッターで発信したので、以下それを再構成して掲載します。
長くなりますが、ご覧頂けたら幸いです。

シンポジウム「これからの学童保育を問う」はじまりました。

最初の報告者は横浜市のキッズクラブと学童の両方の経験を持つお母さん。

小学校入学後、迷わずキッズクラブに入れたが、2週間毎日迎えに行っても、職員は保護者の名前を全く覚えていない。子どもの数に対してスタッフが全く足りない。
あくまでスペースの提供であり、子どもの日々を託す場所ではないんだとわかった。
1か月経ったら、もう行きたくない、と息子。途中で友達が帰ってしまうのがいやだ、と。それで学童へ移った。
学童保育には毎日同じ先生と同じ友達がいる。子どもにとっての居場所ができたと思った。学童に入って、保育園時代と同じスタートライン「働く親にとって安心して預けられる」「困ったら先生に相談ができる」を得ることができ、とても安心できた。
子どもにとって学童保育は我が家。子どもが遊べる友達がいつもいて、困ったときに相談できる先生がいることが前提だと思う。共働きだが学童にもキッズにも行っていない子がどうしているのかといえば、毎日習い事に通わせてしのいでいると聞く。

続いて、元品川区の指導員で現在は児童相談所ソーシャルワーカーの下浦忠治さん。

学童保育は、親の願いと選択で入所してきたところだからこそ、子どもが自分の意志で通えるところ。異年齢なので、自分の思いを出せて安心して遊べる人間関係、心地よい関係がないと。
学童保育は家庭にかわる生活の場である。
自分のことをわかってくれる指導員に「おかえり」と迎えてもらえる場。一人一人の子を心から受け入れ、子ども自らしたいと思える遊びと仲間を取り結んでいく。
発達障害の子どもや、自分の思いをつたえるのが得意でない子もいるところ。
一緒に遊び、生活することで、あてにされているという自己有用感が生まれる。
関わり合って育ち合うことが親に伝えられ、指導員のまなざしも伝えられることで、安心して働き続けられることができる。親も指導員と一緒にその子を育てるパートナーだという意識が持ててきた。
放課後子ども教室との違い。放課後子ども教室は遊び場の提供と文化スポーツの交流活動の場。自主的・自発的なので、来るも来ないもその子の気持ち次第、とされている。
一体化は、財政効率とともに、同じ小学校の児童なんだから分け隔てしないで同じサービスの方がいい、と大都市中心に言われている。
しかし、分け隔てをしないということを前提とした場合、丁寧に進めてきた学童保育事業がことごとく規制を受け、薄められた事実がある。夏休みになると、大変な子どもたちが押し寄せる。一人ひとりの人格を尊重なぞ殆どできなくなる。
「けがをしないよう」「時間通りに帰れるよう」となり、子ども一人一人の変化に気づくなんてできなくなる。100数十人の子どもたちをクラス編成しないでみるようなもの。国の省令に「保護者との連絡」とあるが、学童登録と一般登録に分けて運営している自治体ですら、連絡帳を丁寧に書くなんて困難。
子どもの様子も指導員のまなざしも伝わってこない、学童登録している意味みえない。顔の見えない関係になってしまう。子どもはだんだんと行かなくなる。一体化運営している全ての自治体は校庭も体育館も使えるというが、校庭は4時近くならないと遊べないので、室内に閉じ込められることになっている。
子どもたちが置かれているもう一つの現実に貧困問題がある。
母子家庭の5割が非正規就労。就学援助は15%、全国で155万人に上る。見えにくいが確実に増えている貧困問題は、経済問題にとどまらず、親との会話、ライフチャンスの格差が広がっている。
子どもたちには不安感、孤立感を背負う問題なので、ケアが求められる。福祉としての学童保育の役割をしっかり意識して、子育て、子育ちに取り組むべき。一人ひとりの子どもの心の声に耳を傾け、隣に寄り添い、生活支援の視座をもってかかわれるのは学童保育しかない。
国が言う「多様なプログラムを提供する」ことでは、子どもを支えられない。
経済的な理由で学童へ行けない問題を、国レベルで取り組むことは喫緊の課題。
国の省令をないがしろにしないためにも、学童と放課後子ども教室との一体化ではなく、それぞれの特性を踏まえた連携にとどめるべき。

続いて、国の「放課後児童クラブの基準に関する専門委員会委員長」を務めた柏女霊峰淑徳大学教授から。
ご発言の趣旨は「日本の学童ぼいく」6月号P.10 から掲載されています。

続いて、オブザーバーとして参加の厚労省児童家庭局育成環境課長・為石摩利夫さん。

「おおむね40人」の子ども集団に着目し、一つの目安として示されたことには大きな意味がある。専門委員会には水準としての底上げを考えていただいた。指導員の資格については、5年の経過措置の中で研修を義務付けた。小1の壁や、待機児童が出ている問題にも答えなければならない。
次代を担う人材の育成を考えれば、一体型を中心とした整備を推進することを考えている。一体型といっても、基準は適用される。支援の目的と機能をしっかりとやっていく。かみ砕いてガイドラインとして示していく。子どもにとってよい環境を考えると、学校施設を最大限活用していくべきと考えている。
全ての子どもに体験活動は必要。それは一般の子どもも留守家庭の子どもも同じ。決して「機能・役割の一元化を図ろう」ということではない。教員が見ている子ども、指導員が見ている子ども、保護者が見ている子ども、それぞれの姿が違うことも。情報共有されることで、子どもの状況が初めて見えてくる。
子ども一人一人をとらえていくことが必要。しっかりと家庭と連携し、家庭を支援することが求められる。
携わられている皆さんにお願いしたいことがある。私自身も25年近く子ども政策に携わっている。ひとり親、保育、虐待…。社会的に目に見えない壁があり、個人の力だけでは乗り越えられない。
支援に携わる方には3つの視点でお願いしたい。
1.子どもに寄り添う 2.グループワーク 3.家庭の支援 です。

こういう場に国の担当者が出席されていることに今回の会の大きな意味があったと思います。
続いて、会場から出された質問を踏まえて再度シンポジストから。

まず下浦さん
責任ある体制での一体化、は無いと思う。支援を要する子どもがいることも現実。連携をする中で学童保育へ籍を移していけるようにすべきと考えているが、当面どういうスタッフがどういう姿勢で向き合ってくれるのかが気になる。
どちらの指導員にも研修の充実が求められる。責任ある担当制で連携を図ることがベターだと考える。

続いて柏女さん
子ども子育て会議では、エビデンスを示しながら議論を。会議の活性化がとても大事。タウンミーティングを子ども主催で開く。議員が注目し、議会で取り上げられることで、関心が高まる。
国の基準についてこられる現行の学童はどれくらいあるのか、と問われれば、社会的養護施設かさ上げの時に90%がカバーされていればあと10%は経過措置の中でかさ上げできるとしたことと同様に考えていた。たとえば職員資格もそう。
指導員研修の具体的内容は、今後厚労省が決めていくだろうが「放課後児童指導員に求められる資質・技能と資格について(野中賢治)」等が適切と個人的には思う。管理運営責任者の費用を含めていくことを考えてもいいのでは。ガイドラインを意味あるものにしていくということなので、国に期待したい。

続いて為石さん
パターン2は時間で区分しているが、それはできない。場として区分するパターン1で考えている。もっと学校施設を活用できないかという思いがある。子どもが自由に遊べる場があったらよいが、いろんな問題もあるので学校が安心の場所だと考えている。「場所として一体型」ということ。
省令がしっかりしたものでなくて申し訳ないが、いろんな手続きに時間を要したのが実態。条例を早く作りたいという自治体から情報ほしいと言われたので、未完成な面合ったが出させてもらった。できるだけ早く、と考えた。
基準ができたから基準に合わせて下げていいという話ではない。
条例で基準を下げることはあり得ない。
できるだけ多くの現場を作りたい、と思っている。
質の底上げも進めてきた。
最後に江戸川区のすくすくスクールについて。
区部は補助金を受けずに独自にやっているので、成り立ちも様々なのが実情。住民ニーズにきちっと答えているかは子ども子育て会議にかかっている。会議の議論活性化が重要。ニーズを踏まえることは市町村の責務になっている。

学童保育シンポジウムの報告” への1件のコメント

  1. 佐藤さん、ありがとうございます。
    東大和市の一部地域では駅前のマンションなどに若い世代が転入されてきたことにより、学童の定員がオーバーという状況になっていて、今まで「放課後子ども教室」という形で地域の人たちがボランティアで支えてきた事業にも影響が出ています。どのように問題を整理していいのか、まったく五里霧中でしたが、このような形でまとめていただき、提起していただけて大変ありがたく、みんなで考えていくよすがとさせていただきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)