「子どもの貧困対策に関する検討会」傍聴記

今日は午前9時から開催された「第2回 子どもの貧困対策に関する検討会」の傍聴に、霞が関の第4合同庁舎12階会議室へ行ってきました。
子どもの貧困対策検討会
現場からツイートしていた内容を再構成して掲載します。

まず「荒川区の取り組みの現状と課題」を区子育て支援部参事の古瀬清美さんから。
「区政は区民を幸せにするシステム」が荒川区のドメイン。子どもたちは「未来の守護者」、区役所は「区民の安心の砦」
SOSを出せない親、その背後の子どもは尚のこと声をあげられない。区民の笑顔にいくつ出会えたか?と区長に問われる。
感性と創造力が福祉関係だけでなく全職員に求められている。相談支援スキルの向上が急務。
虐待相談は前年の倍以上。やればやるほど掘り起こしになる。今まで気づけなかったケースもある。そこにまで至る前の、切れ目ない支援体制が不可欠。区子ども家庭支援センターと都の児相の二層性は課題であり、区への児相移管を要請している。

続いて国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんから。
貧困対策とは、だれを対象とするべきか?対象の大きさを認識することが大事。
厳しい子どもたちへの対策は急務だが、広い捉え方が必要。
普遍的制度(川上対策)と選別的制度(川下対策)の違い。貧困対策では、普遍的制度をとった国が結果を出している。
子どもだけの支援ではなく親の支援が不可欠。
子ども手当以降、貧困率は暫定値だが下がっている。
現金給付は拡充すべき。特に貧困率が50%超のひとり親への児童扶養手当の拡充は不可欠。
定時制高校や底辺校への集中投資を。児相にも。
学校を離れた未成年への支援をつくる。その子たちが「帰れる家」の提供を。
先進諸国では政府が貧困の削減数値目標を定めている。
相対的貧困だけでなく多元指標が必要。進学率よりも中退率が問題。
日本の保育所がやっていることは、貧困対策としても諸外国に比べて充実している。正しい評価が必要。親への支援が課題。

続いて、「家庭の社会経済的背景(SES)と学力格差~不利な環境を克服する学校の取組」について、お茶の水女子大学副学長の耳塚寛明さんから。
子どもの努力(学習時間)によって学力は上がるが、その成果は限定的であり、経済的背景の方が強く作用するという調査結果。
SESによる学力格差を抑え込んでいる学校では、家庭学習指導、特に自主学習を課している。宿題を出しっぱなしでなく、翌日きめめ細かな指導をしている。
少人数指導、小中連携、基礎基本の定着、言語(読み書きだけでなく聴くことも)高い成果を上げている。
しかし教員の負担は大きい。
学力格差は家庭問題ではなく社会問題。
とはいえ、学校にお願いしても難しい現実があり、行政には条件整備を進めてほしい。
財源が乏しければ選択的に、より厳しい学校から投下を。
経済的政策に比べ文化面は難しいが、幼児期における教育&保育の質が大変重要。
スクールソーシャルワーカーは家庭の文化にタッチできる貴重な立場。

続いて「子どもの貧困支援に学校と地域で出来ること」と題して、幸重社会福祉事務所代表で、NPO法人山科醍醐こどものひろば前理事長の幸重忠孝さん。
「子どもの貧困を考えるワークブック」をもとに発表。
私はあえて子どもの視点から話したいと、「仁の物語」「智の物語」を。
子どもはある日突然貧困になるわけではない。学校が力になるべきだが、子どもにとってストレスであることも多い。
地域の連絡協議会は必要だが、あくまで見守り支援であり、子どもへの支援がない。情報提供や経済支援だけでは子どもへの支援にはならない。
それには人と人のつながり。生活の支援から。
食べること、寝ることを普通にしたい。ごくごく当たり前の生活を望んでいる。夜の生活支援も。
当事者は専門家から特別な支援を求めているわけではない。
しかし、地域の人に任せてしまうのではなく、そこにこそ専門家が必要。
学校で安全で安心な生活を送れない子どもがいる。
なぜかと言えば、子どもの貧困を先生が知らなすぎる。
教育的な指導だけではだめ。教員養成や研修の中に貧困問題をきちんと位置付けてほしい。
民間団体は地域から信頼されることが難しい。学校とつながることで1+1が3にも4にもなる。
こういう場所を広げるには、居場所づくりを、NPOや社会福祉協議会との連携で。
児童館や学童保育でのオプション事業として考える。
子育て支援サロンや高齢者サロンなどに組み込んでいく。
そして、学校現場に子どもの貧困の視点を入れること。

続いてNPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長さんから「教育支援を入口とした子どもの貧困対策及び貧困の世代間連鎖を断ち切る取組み」
「タダゼミ」「ガチゼミ」等いろんな支援実践から、食の支援や自治体との連携も多岐にわたっておられます。
教育支援による子どもたちへの成果として
1.学力向上によって貧困の連鎖以外の選択肢が増える
2.ソーシャルスキルの獲得、自立に向けたトレーニングになる
3.社会への失望を払拭。将来を信じる力。希望を与える。
生活保護を受けず頑張っているギリギリの家庭への支援が薄い。大多数の支援対象にリーチできる仕組み構築が必要。
震災後に現地での支援を継続されている実践から。親は亡くしていないが大変な子たちが多くいる。今になって強いトラウマの親子も。

休憩後、検討会構成員の日大准教授・末冨芳さん「就学前教育から大学までの教育の支援」に移りました。
1.可能な限り早期からの就学前教育の保障
2.貧困対策のプラットフォームとしての公立小中学校と自治体・学校間格差の解消
3.学校教育と学校外教育との連携による子どもの学習支援
4.高校進学後の就学維持とドロップアウト防止
5.専修学校・大学進学に対する給付型奨学金等を通じた「機会の均等」保障
どれ一つとっても、それだけで1時間2時間と聞きたい内容でしたが、全体で10分程度の報告と提言。

続いて、あしなが育英会奨学生・高橋遼平さんから、当事者としての実感を込めた報告と提案がされました。

最後は大阪府立大学・山野則子さんから「学校でキャッチでき、対応できる仕組みを」。
こちらも、スクールソーシャルワーカーの重要性とともに、見えない貧困をキャッチするシステムとして、子どもの状況をほぼ全数把握できる公立学校の活用が提唱されました。

放送大学副学長の宮本みち子座長の進行のもと、途中10分間の休憩だけで、質疑を含めて本来は20分間ずつではとても収まらない内容の連続。60~70用意されたと思われる傍聴席もいっぱい。頭の中が沸騰している感じで傍聴を続けました。

教育と福祉、文科省と厚労省が一体となった取組みへの方向性を強く感じる会議でした。
特に、「学校」と「福祉」をしっかりつないでいくことが、子どもたちの状況を変えていくために不可欠だという認識は共通のものであったように思います。
他にも多くの論点がありましたが、これまで議会で私に対してなされてきた答弁「貧困と学力の相関は未だに不明」とか、「学校は家庭の経済面には立ち入れない」とかいう状況でないことは明らかだと思います。

既に内閣府の所管サイトには、今日の会議の資料が全てアップされています
あしなが育成会のHPにも、今日の様子が掲載されているのを見つけました。

次回は5月22日(木)13:30~16:30です。

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