厚生委員会の視察、2つ目の自治体は大阪府大東市。
テーマは「地域包括ケアに向けた地域づくり」
規模や背景があまりにも異なる自治体では政策を参考にすることはなかなか難しい面がありますが、大東市の場合は東村山市と市域面積(大東市18.27平方キロ:東村山市17.14平方キロ)も人口規模(大東市約12万2千人:東村山市約15万人)も比較的近く、大都市近郊のベッドタウンという点でも似た性格を持っていますので、最適だと考えました。
そして、市内の実に108もの会場で介護予防活動が持続的に展開され、高齢者の健康度や介護度にはっきりと効果が表れていると聴き、その内実をキーパーソンに直接学びに伺うことにしたのでした。
私たちを迎えてくださったのは、大東市保健医療部の大石達也統括次長と、この事業を牽引されてきた同部高齢介護室課長参事の逢坂信子さんでした。理学療法士として市の正規職員として採用されて以降、一貫してリハビリや健康づくりに関わり続けてこられた、まさにプロ。
平成15年頃から特に虚弱高齢者からの相談が増えたことで、その裏付けを調べた結果、その半数が不活発な生活が原因とわかり、具体的な対策として「大東 元気でまっせ体操」をスタート。
これは元気な人だけが通う場ではなく、要支援レベルの高齢者や介護保険の通所サービスを利用している人も「自宅からおおむね歩いて10分くらい」の場所で一緒に気軽に楽しめるものです。体操だけでは楽しく続けることが難しいので、頭の体操やお茶やお菓子の時間もあり、どこも「喋れる」「笑える」場になっています。
これはツボだな…と思ったのは、市内への普及に際した「スタート応援事業」では、データや健康になったらいくら得をするかというお金の話をしっかり伝えて説明した上で、「会場確保と参加者10名以上で、毎週体操を続けるグループ限定で、特別に市が応援します。但し先着順ですから相談はお早めに」というラインを厳守していることでした。
往々にして「いつでも相談してください」とか、「条件を満たし切らなくてもよし」とかしてしまうものですが、税金を投じて行う以上は効果に結びつくやり方(本気度)が求められますし、「いつでもいい」と言われたらやらなくなる人の心理をちゃんと突いた呼びかけは、見事だと思いました。
逢坂さんの、「行政が頼んで始めてもらっても続かない」「住民だけで安全に続く方法でなければ」「往々にして依存させているのは行政の側」「行政は見守る中で住民が主体となってできるようにしていくことが仕事。子育てと一緒」「住民の力を信じること。それ無しに何ができるのか」と次々に発せられる言葉には、長年にわたって腹を決めて住民と向き合ってきた自信や、喜び、誇りを感じました。
「元気でまっせ体操」が住民主体でどんどん広がったことで、体力測定にも年間医療費にも、それまでとは明確な差異が出てきています。
そしてそれが、地域の支え合いに着実につながってきたことで、新たに「生活サポート事業」をスタート。
これは体操に来たくても来られない人たちがいることから、その人たちの窓ふきや大型ごみ出し、庭の手入れなどの生活支援を、近所の少し元気な住民が支える仕組みです。
今年9月現在でサポーターは500人を超え、中心は60代以上の方ですが、中には地元の大学生や若いお母さんなども入っているとのこと。
「介護予防・日常生活支援総合事業」と呼ばれる分野にいち早く積極的に取り組んできたことで、大東市の訪問型サービスの実情は大きく変化し、介護認定率にも明確な変化が見られるようになっています。
そして、総合事業を市民を中心とした生活サポーターが担うようになったことで、要支援レベルにつぎ込まれていた介護職のマンパワーが介護職しか関われない重度者へとシフトしてきたことは、介護職の人材不足という全国共通の深刻な課題への解決策とも言えると思いました。
長くなりましたが、うちのまちとの決定的な違いを一つ。
逢坂さんのようなハイレベルな専門職の方が現場を長年担い、リーダー役として後進の指導にもあたり、市民との確固たる信頼関係を築いている、という点です。
どこでもつつがなくこなせるジェネラリストも大事ですが、2,3年で異動しない良質なプロがいるからこそ、住民主体の取組みを本気になって展開できているということには、大いに学ぶ面があると思いました。