【柱は早期発見と支援継続~箕面市の挑戦】 ※個人facebookの投稿と同じ内容です

2日間の厚生委員会としての視察から戻りました。
昨日伺った大阪府箕面市の「子どもの貧困対策」の取組みから報告します。
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まず、「これまでの市の施策は、一時的、場当たり的対応であり、深刻化してからしか取り組まなかった。どこが見守るるのかがはっきりせず、結局は放置しているケースも少なくなかった」という弱点を自覚するところからのスタートは、そのまま東村山市を含む多くの自治体が学ぶべきことだと思いました。
正確な課題認識のないところに改善は生まれませんので。

そこで箕面市では、
・ずっと見守り続ける仕組みが必要
・問題を持った子どもだけを対象とするのではなく、環境因子を持っている子どもに悪い兆候が見られれば早期の支援を可能にしたい
・一定程度落ち着くと手を引くのではなく、支援効果を見続ける必要がある
ということで、長期間見守るためには、データベースが必要だと考えたそうです。
これが「0歳から18歳までの子ども成長見守りシステム」の基本となります。

「経験則での意見は多いが、それは個人の経験値が殆どであり客観的なものではない」という指摘もその通りだと思いました。

私個人としても、ともすると己の思いや価値観だけでわかったような物言いをすることが少なくないですし、役所の仕事はもちろん、議員という仕事も、エビデンスを問われる時代を迎えています。
箕面市は、それまで各部署に散在していた子どもに関する情報と、子どもの家庭(保護者)に関する情報を集積し、子ども個人に結び付けるとともに、過去分から蓄積して変化を追跡できるデータベースを構築。
そしてそこから見えてくる新たな情報を関係機関で共有し、部署を超えて一人ひとりの子どもに適した対策に結びつける取組みへとつなげておられました。

子ども成長見守り室は、ご説明くださった松澤ひとみ室長ともう1人だけの2名体制なので、大変なご苦労だと思いましたが、「子どもの義務教育を担う、住民の基礎情報を持つ、継続的な組織である市町村にしかできない取組み」という言葉に、箕面市さんの覚悟を感じます。

実務的には、これを可能とするために個人情報保護条例を改正し、①親の経済的困窮を推定できる情報 と ②経済的困窮を要因として発生している現象 の2種類の情報を子ども個人をキーに名寄せします。

当然のことながら情報セキュリティも一番問題とされたところだそうで…他から完全に独立したシステムとして、サーバー1台&運営管理端末はセキュリティルームにあるので生体認証とPWでしか入ることができません。子ども成長見守り室の2人だけにアクセス権限があり、見ることだけが可能で、情報は絶対に取り出せない仕組みになっているとのこと。

費用面では、職員2名の人件費は当然のこととして、見守りシステムの構築に約1,000万円 保守には年間100万円ほど。文科省の交付金を活用しているそうです。

成果は?という質問には、「分析できる体制は整ったが、ケアの体制はこれから。経年変化を見ながら進めていきたい」と正直にお話しくださいました。

東村山市で言えば市長部局の「子ども家庭部」にある「各種手当やひとり親支援」「保育所・幼稚園・認定こども園」「母子保健」「子ども家庭支援センター」「虐待対応」等、が、箕面市ではそっくり教育委員会内の「子ども未来創造局」に配置されている、という全国的にもかなり稀有な組織体制も、事務の委任や補助執行という手段を使えば可能なのだということを初めて知りました。
最初は、保育園の3歳児以上と幼稚園の窓口が異なるのはおかしい、という素朴な問題が、その後の総合的な一元化につながったのだそうですが、本気になれば常識だと信じ込んでいることだって見直して変えていけるということなのだと思います。

東村山市では「 中高年事業団やまて企業組合」に委託して市民センター1階に子どもたちが通ってくる形で取り組み、着実に成果を上げている生活困窮者自立支援事業としての学力保障・学習支援事業は、箕面市では「NPO法人あっとすくーる」に委託し、「保護者や学校の求めに応じ、学生サポーターを派遣して行う」というやり方を取っていました。
委託先が学生主体のNPO法人であるため、ニーズの増加に人材確保が追い付かなくなってきてしまっている部分は、家庭教師派遣の「トライ」にこの事業の意味をしっかり理解してもらった上で少しずつお願いしているとのことでした。
東村山市でも今年度から中学校卒業後の子どもたちの支援にも取り組み始めていますが、箕面市でも高校生も制度が使えるように拡充を図っていました。

また、学校における授業支援員(大阪府の加配が年間1,260時間/市の加配22,971時間)、スクールカウンセラー(大阪府の加配1,680時間/市の加配4,836時間)、スクールソーシャルワーカーは(大阪府の加配360時間/市の加配3,344時間)は、()内の数字で示したように、大阪府からの補助だけでなく、市独自で予算を加配して大幅に増員しておられました。本気度が違います。スゴイ!

課題としては、「就学前の非認知能力等の情報」収集へ幼稚園や保育所の協力を求めていくことと、「高校生の学力・非認知能力等の情報」収集へ高校の協力を求めていくことを挙げておられました。

たいへん長い報告をお読みいただき、ありがとうございます。あと少し続きます。

8月にお邪魔した兵庫県明石市は、「すべての子どもを地域みんなで本気で応援する」という泉市長さんの大号令のもと、貧困世帯だけでない徹底した子ども政策を最優先で進め、見事に選ばれるまちとなり、財政面でも出生率でも明確な成果を上げておられました。
箕面市も、アプローチも言い方も違ってはいますが、東村山市を含む多くの自治体が想定している対象より、はるかに広い範囲の子どもたちを視野に入れ、「箕面市教育大綱2018」の一番最初に「貧困の連鎖の根絶」を掲げ、すべての子どもが自分自身で将来を選択して切り拓いていけるよう全庁的にな取組みにしようと全力を傾けておられました。
「どうせ自分はやってもだめなんだ…」という経済的困窮にある家庭の子どもたちに多いことが各種調査でも裏付けられている「自己肯定感の低さ」をどう克服していけるのか、夢や希望を持ち続けて諦めない子どもをどう育てるのか。
箕面市と比べると財政力が低く、民生費の負担割合が高い東村山市ですが、課題は全く同じだと思います。
正確な実態を把握し、効果的な対策へつなげるためには、必要な金はかけて調査を行い、客観化し、共有化することが不可欠なのだいうことも痛感。当市の施策につなげる努力をせねばです。

本気の自治体に学ぶ大切さを改めて実感した箕面市の視察でした。
お忙しい中ご対応くださった職員の皆さまに心より感謝です。

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