一昨日は朝8時半に国立オリンピック記念青少年総合センターの国際交流棟へ。朝から晩まで「子どもの貧困対策」について学び直しておりました。
10時から12時40分までは「第2回 地方議員フォーラム~自治体施策を進めるために」、お昼を挟んで14時から18時過ぎまでは「関東甲信越ブロック集会」。
いずれも主催は、公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのば。
18時半からはオリセン内のカフェでお酒もいただきながらの交流会をたっぷり2時間…名刺交換に始まってかなり深い話もできました。
「地方議員フォーラム」は、子どもの貧困問題に取り組む全国の議員が情報交換し学び合える場を…ということで、あすのば代表理事の小河光治さんの呼びかけで2018年に第1回を開催した際に、菅原直志都議と小林重太郎小諸市議と共に運営に参画し、コロナ禍を経て今回も…ということで準備のお手伝いと閉会の挨拶等を務めました。
会冒頭の挨拶で、小河さんはこんな問題提起をされました。
「14年前、子どもの貧困対策を求める集会をこの場所で開いた。その後、子どもの貧困対策推進法ができ、今年で10年を迎えた。4月にはこども基本法が施行となった。
しかし今、子どもの貧困対策は最大の危機だと考えている。
それは、岸田首相が「異次元の少子化対策」と言ったことで、貧困や虐待や自殺などで本当に苦しむ今を生きる子どもたちのことよりも、将来の子どもたちの話になってしまったことにある。
こども真ん中、のこどもって誰なのか?ぜひ一緒に考えたい。」
基調講演は、小河さんが「ファーストペンギン100匹分」と称し、時の人とも言える前明石市長の泉房穂さん。
7年ほど前に明石市を訪ねて以来、泉さんには10回近くお会いしてきてその迫力は十分承知しているつもりでしたが、控室での打合せからヒートアップする姿には目を白黒…。
講演後は、朝日新聞記者の中塚久美子さんをコーディネーターに、泉さんと、桑名市議会議員の渡辺さとみさん、認定特定非営利活動法人 Learning for All代表理事の李炯植さんによるパネルディスカッション。
メインテーマは①「こどもまんなか」というけれど、その「こども」とは誰なのか? ②「教育×福祉」「官×民」どうすればよいのか?
午後は、自治体の職員さん、児童養護施設や子ども食堂の責任者や職員さん、居場所づくりに取り組んでおられる等々、現場の方たちがメインの関東甲信越ブロック集会。
基調講演は放送大学と千葉大学の名誉教授・宮本みち子先生。政府有識者会議の座長も長く務められた方です。
そして、
①全小学校区800か所に居場所を(埼玉県少子政策課)
②松戸市版スクールソーシャルワーク事業(千葉県松戸市教育委員会職員)
③ひとり親家庭高校生通学費助成金(神奈川県川崎市児童家庭支援・虐待対策室職員)
と中身の濃い実践報告が続きました。
私は現場を持っていませんので、このような機会に日々子どもたちと向き合っておられる方たちとお会いして率直な声に触れ、学ばせていただくことが本当にありがたいものです。
東村山市も様々なことに取り組んでは来ましたが、今一番気になるのは、当事者である子どものことを考えたら待ったなしの課題にもかかわらず、国から間もなく示されるとされる「こども大綱」待ちのような状態になっていることです。
泉さんが最も強くおっしゃっていたのもこの点で、「地方議員は3つの発想の展開を!」として、
①お上意識(自治体より国が上という意識)からの脱却 ②横並び(なんでも近隣自治体と比べる)からの脱却 ③前例主義(できない理由探し)からの脱却
をド迫力で訴えられました。
取ったメモは長いわりに再現率は高くないのですが、備忘録として以下アップします。
【開会のあいさつ 小河代表理事】14年前、子どもの貧困対策を求める集会をこの場所で開いた。その後、貧困対策法ができて10年が経ち、この春にはこども基本法が施行となった。しかし今、子どもの貧困対策は最大の危機だと考えている。岸田首相が「異次元の少子化対策」と言ったことで、貧困や虐待や自殺などで本当に苦しむ今を生きる子どもたちのことよりも、将来の話になってしまった。強い危機感を抱いている。今の子どもたちのことが放っておかれる。今日お願いしている泉さんとは、ずっと共に取り組んできて、ファーストペンギン100匹分。今、こども真ん中のこどもって誰なのか?今日は高い参加費もいただいているので、クローズで行う。忌憚のない遠慮ない発言を。
泉房穂さん)最大のポイントは3つの発想の転換だ!
①お上意識からの脱却…せっかく地方議員をしているのだから、まず見るべきは子どもの顔。話を聴くのは地方議員。いい方は悪いが、時間もあるし金もあるだろう。社会は未だに意識が変わらない。ど真ん中に子ども、ど真ん中に市民だ。国からは子どもの顔なんて見えない。地方議員は一番近いところ、会えるところにいるのだから、実際を把握せよ。
②横並びからの脱却…隣町と同じことをする必要はない。自治体によって年齢も所得も違う。同じ明石市内でも地域によって違う。我が町を見よ。隣町じゃない。
③前例主義からの脱却…時代が変わっているのだから新しい政策が要るに決まっている。子どもが困っている。子どもがどうか、なのだ。それをしなければ怠慢。ネグレクトしているのは政治家。邪魔するのは前例主義。前例がないからこそ必要なのだから。
地方議員にお願いしたいことは4つ
①子どもの顔を見ろ、近くのこどもの顔を見ろ。
②市役所の担当者と情報共有してほしい。所管職員は実態を必ずしも把握していない。職員は訳アリの対象者には距離を置こうとする癖がある。
③それを踏まえて公の場である議会で提案を。ギリギリ受けられるボールを投げてほしい。
④それを続けてほしい。しつこいくらいに。
最初の市長選挙で掲げたのが「すべての子どもたちをまちのみんなで本気で応援すればまちのみんなが幸せになる」。2つの柱で進めてきた。
①ベーシックなサービスとして子どもを応援する施策…未来施策と考える。医療費、給食費、おむつ代の負担を軽減する。18歳まで息長く継続的な負担軽減策を所得制限を掛けずにすべての子どもたちに。
②ピンポイントとしての救貧政策…養育費の立替え、奨学金の創設、コロナ給付金等。こちらはすぐに必要であり、政策はスピード感が何より大事。食べ物か現金かだ。場合によっては1回こっきりでもいい。コロナ禍では速やかに5万円出した。
・両方を兼ねた政策もある。18歳までの児童手当は、子どもは親の持ち物ではないので、申請者は子ども本人にしている。16,17,18歳が自分で届け出る。親の名前の場合は認めず、口座も子ども名義にした。毎月5千円支給をしている。
・金がないとは言わない、金は後で何とかするもの。金がないというのは、前例主義によって予算を削らないからだ。どこかに待ってもらわないと、誰かに嫌われないと進められない。
・経済を回せばいい。子どものいる家庭がお金を使えるようにすればいい。市長退任の直前、明石市は国からの10億円を1人3千円ずつ地域で使える商品券として配った。他の自治体はバス会社やタクシー会社に振り込んでおしまいだった。なんの意味もない。
・明石市の養育費立替制度は、日本では異例だが世界では当たり前の政策。明石市は韓国の制度をパクった。立替えが目的ではなく、「もしもし、子どもさんが困ってますよ、払ってくださいね」と声を掛けることが大事。6割が回収できている。
・希望者には児童扶養手当の毎月支給を行っている。家計管理がうまくできない家庭が多いのだから毎月にすべき。できないと言っている国はさぼっているだけだ。
・こども食堂…共助を公助している。地域が手を挙げたら行政が場所を確保する。学校を通じてすべての子どもたちにビラを配る。アレルギー対応や保険料なども金は行政が持つ。こども食堂は「気づきの拠点」。ここに来た方がいいという子が見えてくる。明石市はたった一人でも腹を減らさない。明石のこどもは自分のこどもなのだから。
・児童相談所…子どもが死なないことが児相の目的なのだから、子どもの命を守れる体制を作った。職員配置は国基準の2倍。選択と集中ではない。譲ってはいけない。そんな人材がいないと言われるが、だったらつくる。そこで、西日本子ども研修センターを開設した。人がいなければつくれればいい。
・明石市では小学校1年生は30人学級、中学校も35人学級。子どもに他国の半分しか金を使っていない国がそもそも問題であり、教育予算を倍にすればいい。
・コロナ禍で大学の学費をすぐに100万円振り込んだ。これは給付でなく貸与だが、無利息。大学に122件、6,000万円振り込んだら驚かれた。
・高校進学への奨学金…2020年度は30人枠に121人の希望があり、110人に増やした。2021年度は100人に222人で200人に増やした。200人に増やしたら321人来たので222人に増やした。予算に子どもを合わせるのではなく、子どもの実情に予算を合わせるのは当たり前だ。
・地方議員の役割は、特に子どものことでは極めて大きい。現場の問題が圧倒的に多いのだから。
渡辺さとみさん)ご自身の歩みと取組みをパワポに沿って説明。
李さん)ラーニングフォーオールの事業案内をパワポに沿って説明。
・児童福祉法改正に伴い令和6年から始まる児童育成支援拠点事業に目を
・行政の委託を受けるのは、金銭的に厳しいし、うっとうしい。
・行政のこども支援のレベルも上げていかないといけない。子ども予算は限られているにもかかわらず無駄に使われている実態がある。
【パネルディスカッション】
中塚さん)こども真ん中のこどもはどういう子ども像なのか。それによって大綱の捉え方も違ってくるのではないか。
李さん)一番しんどい子の声を聴きに行こう。意見形成…どう困っているかも言えない子の声を安心できる場で聞かないといけないのに、生徒会のこどもたちだけに聴いて済ませる役所が相変わらず多い。
中塚さん)しんどい子たちの声をどうすくい取っているのか
泉さん)明石市は子ども総合支援条例を制定し、各論を書き込んで条例改正もしながら進めてきた。生徒会の役員の声を聴けばよいのではなく、状況をしっかり把握して、声を挙げなくても支援することがポイント。児相は、一時保護した職員以外が子どもの話を聴くようにしている。それでも信用ならんので。地元の弁護士が会って子どもの本音を掴むようにしている。
泉さん)子どもって何歳まで?という議論になりがちだが、支援が必要な状況を支援すること。ルソーが登場するまでは子どもという概念が無かった。未成熟で不十分だがそれはそれとして尊重する対象として概念をつくった。子どもの発見。周りが関わることが必要な存在。しっかりしている子どもは大人。
中塚さん)一人ひとりを見るということは子どもの権利を保障すること。こども真ん中というが曖昧。子ども権利が真ん中にあると考えれば整理がつくのかな。
李さん)学校だけではできないから、地域の人もNPOも一緒にやってくれ、という地域は支援がうまくいく。この議員に好かれると行政に嫌われるというのはある(笑)
泉さん)議員へ3つ言いたい。
①民間と行政が一緒にやる
②ネットワークづくりが大事。中間支援団体…地域の自治会や子ども会のために事務局に市職員を出して支える。直営ではなくこども財団にすると柔軟になる。「共助を公助する」。公設民営のフリースクールもできた。
③提案型で頑張ってほしい。担当者とよくすり合わせをすることだ。どこかで成功していることを示しながら話すのもいい。
・教育と警察と医療は市長が手を出せなくて悔しかった。県と市の連携が非常に重要。
李さん)行政資源と民間資源を洗い出して、それぞれがやるべきことはなにか、から。専門性を安く買わさない。
中塚さん)やる気のある人の見分け方は?
李さん)すぐに心配している子どもの名前が次々出てくる校長や、一人の子どものことを話せる職員だと、話がうまく進むことが多い。一方で、いくら話しても生徒の名前が出てこない校長や、上からモノを言う職員のところは厳しい。
泉さん)市役所が本当に市民のために必要な仕事をすれば、職員は足りる。やらなくてもいい仕事、やった方がいい仕事が多すぎる。そして金だってある。金を倍増して子どもに寄り添う職員を3倍に増やしたから明石の施策は実現した。津波の心配が小さいので災害対策費があまり要らなかったり、市域が狭いので下水道整備や道路整備にあまり金が要らないというメリットがあった。誤解されているようだが、他に皺寄せをしない範囲で子どもにシフトした。
最後に…明石市できることはどこでもできる!明石を追い抜いてほしい。皆さん、市長に立候補してください。(会場笑)